アンダーマイニング効果
前職では人事を8年経験しましたが、人事評価制度の策定は最も苦労しました。
従業員の仕事に対する評価に見合った給与レンジを考え、適正な報酬を従業員に還元できるような制度を設計するのですが、人が評価するものなので絶対的な正解はなく、会社の方針が変われば評価ポイントも変わるため、都度改定が必要になります。
そのため、メンテナンスが頻繁に発生しないよう少し抽象度を上げた表現である必要があります。
私の理想とする組織は、理念に対する強いコミットがあり、その実現のためにメンバーがモチベーション高く、業務に取り組む形です。(経営に近い人であればこう考える人は多いのではないでしょうか?)
しかし実際、人が業務に取り組む動機はそれぞれ。
特に理念より報酬に重きをおくタイプは、報酬に結びつかない業務は行いたくないという見方が強いため、時として「それは自分の仕事ではない」と線引きをしてしまうケースが起こります。報酬重視タイプを否定するわけではないですが、ベクトルが自分に向いているタイプが多い印象があります。
安易にこのタイプを動かすため、報酬と業務をすべて紐づける設計をすると上記の傾向が強くなり、結果として組織全体の連携や一体感が削がれていきます。これは「アンダーマイニング効果」と呼ばれます。
人事評価などのハード面を整えることは大事ですが、それ以上に何のために業務があるのか、我々はなぜこの事業に取り組むのか、根本にある考えを常日頃から従業員と確認し合うことは、もっと長期的目線で目の前の仕事を考えてもらう上でより大切だと思います。